サウンドマスキングのメリットとデメリット、そして導入の際の注意事項とは?
コロナの影響による換気対策やWEB会議が進むことで「会話漏れが以前より気になるようになった。」、また空間の見直しを考える中「今まで使用しなかったスペースを商談室や面談室として設ける予定をしているが、防音対策があまりされていない空間なので、情報漏洩が懸念される」というご相談を頂きます。
防音を行うにはスプリンクラーの設置なども含め費用も大きくかかり、そもそも消防法がネックとなり現実的ではないケースも多いようです。そこで、サウンドマスキングを導入して、情報保護を行おうと考えておられる方も徐々に増えているのではないでしょうか?
弊社グラムスラムでは、"リリーバー""という会話漏れ防止に特化をしたサービスをご案内させて頂いておりますが、そもそもサウンドマスキングとは、ある周波数の音が同じ他の周波数の音を聞こえにくくするという人の聴覚の特性を利用したもので、スピーカーを設置して今まで存在をしなかった音を流す事で漏れて聞こえる声を生理的に聞こえにくくするというものです。
*某NPO法人様での弊社サウンドマスキング導入例。欄間が空いている相談室内の会話が外に漏れないようスピーカーを設置。
そのメリットは、防音工事より非常に安価で工期も少なく、消防法により防音対策が出来ない場所で対策が可能な点ですが、デメリットは、今までに存在しなかった音を流すという点です。
今回は、過去弊社にお問い合わせを頂いた事例を元に、導入を検討されるうえで、クリアにして頂きたい事項3点を上げさせて頂きます。
1:会話の内容を不明瞭にさせるものであり、音漏れを物理的に消したり小さくさせるものではありません。
2:漏れて聞こえる声と同等程度の音量のマスキング音を流す必要があります。(*ただし、提供業者様によって異なります。)
3:(2の補足として)会話漏れを聞かせたくない場所にマスキング音を流す事が前提となります。
1:会話の内容を不明瞭にさせるものであり、物理的に音漏れを消したり小さくさせるものではありません。
「"ガヤガヤ感"を抑えたい」「静かな空間」とさせたい場合は、防音工事の領域となります。
ガヤガヤとした騒がしい環境を静かな環境変えたい場合には、サウンドマスキングは適しません。この場合は、壁を設置する、欄間を塞ぐなどの防音対策が必要となります。
⇒(関連記事)病院・オフィスの防音・会話保護の3つのルールとは?
先述のように、異なる音を流し漏れて聞こえる声を生理的に聞こえにくくしますので、物理的に消したり、小さくさせたりするわけではありません。機密情報やプライバシーに関わる会話の内容を不明瞭にする事はできても、漏れる音のエネルギー自体を物理的に小さくしたり消したりすることはできませんので、注意が必要です。
*サウンドマスキングは、ガヤガヤとした賑わいの空間を静寂な空間へと変えることはできません。
以前、ショッピングセンター内にある金融関連の店舗様から、お客様との相談スペースへ隣の飲食店の行列から聞こえる"ガヤガヤ感"を抑えたいとご相談を頂いた事があります。
相談スペースでは壁やパーティションなどで区切っておらず完全にオープンなスペースで、そのすぐ隣の通路にはいつも若い方の行列が出来ておりました。ガヤガヤ感自体は、聴かれて困るような情報でもありませんが、とにかく騒がしく静かにしたいとの事でした。
しかし、このケースでは、ガヤガヤとした声の代わりに、サウンドマスキングの音が聞こえますので、目的には合いません。個室ブースなどを設置して頂き、少しでも静かな空間にして頂くしか対策はないかと思われます。
2:漏れて聞こえる声と同等程度の音量のマスキング音を流す必要があります。(*ただし、提供業者様によって異なります。)
遮音がある程度されている環境での導入が望ましいです。遮音性が殆ど無い簡易なロウパーティション越し、もしくは完全なオープンスペース上に導入をする際は、マスキング音は大きな音量にする必要があるので、場所によっては適さない場合があります。
弊社サウンドマスキング"リリーバー"は、欧米などでサウンドマスキングとして活用されているホワイトノイズと異なり、大きな音量ではなくとも、漏れて聞こえる声と同等のレベルの音量の音を流す事で、その会話の明瞭性を下げることが可能です。
しかし、以下の写真のように簡易に設置が出来るパーティション(一般的にロウパーティションと呼ばれます。)は、隙間の面積も大きく素材も軽いので、そもそもの遮音性が低く、ロウパーティション越しから漏れる声の明瞭性を下げるのには、間仕切りの壁・スティールパーティション越しから漏れる声と比較して、大きめの音量が必要となります。
*いわゆるローパーティション。設置は簡単で遮視性はありますが、遮音性は弱いです。
また、完全なオープンスペースでは、遮音性は一切ありませんので、ロウパーティションよりさらに大きな音を流す必要があるかと思われます。
ですので、オフィスの執務室などにおいて上記の環境下での導入の際は、注意が必要です。
脳科学的には、人は完全に無音な空間より、大きくない程度音量の環境音がある方が集中力は上がる傾向にありますが、音が大き過ぎると反対に、業務に差し支える傾向にもあるようです。
弊社のマスキング音は、無意識に聴き流させるシンプルな環境音(アンビエント)タイプで、かつ適度な音量でも心理的な不快感を与えないように制作をさせて頂いておりますが、遮音要素が少ない環境下での導入は音量の面で問題となる事もあります。
以前、従業員が比較的に密に滞在しているオープンスペースの執務室内で、隣の列同士の電話応が聞こえないようにしてほしいとのご要望がございました。従業員の方の中には、声が大きな方もおられ、電話先の相手方にもその内容が分かってしまうような状況のようでした。
*写真のように遮音が殆どされていなく座席間の距離が近い場合は、マスキング音の音量を大きくしなければなりません。
試しにデモンストレーションをさせて頂いたのですが、やはりこの場合、マスキング音の音量を大きく上げれば、ある程度はマスキングされますが、音が大きすぎて業務に差しさわりがあると現場の方には判断され導入には至りませんでした。
サウンドマスキングは、ある程度遮音がされた環境での導入が望ましいかと思われます。
3:(2の補足として)会話漏れを聞かせたくない場所にマスキング音を流す事が前提となります。
個室の会議室内や診療室内に導入の際は、場の雰囲気に合うかどうかの確認が必要かもしれません。
3は2にも関連する事ですが、サウンドマスキングを行うには、会話漏れを聴かせたきないスペース上にスピーカーを設置して、マスキング音を流す事が原則となります。
よく「会話漏れの場所にマスキング音を流してはだめなのか?会話漏れを聞かせたくない場所に音は流したくない。」というご意見を頂きます。しかし、その場合、マスキング音が遮音されてマスキングを場所には適切に届きません。
*会話漏れを聞かせたくない場所にスピーカーを設置する場合と、会話漏れの場所にスピーカーを設置する場合の違い。
上記の図のように、マスキング音の遮音を踏まえてて効果を出そうとすると、スピーカーを設置した側はかなりの音量を出さないといけなくなりますので、会話漏れを聞かせたくない場所にスピーカーを設置する事が非常に望ましいかと思われます。
⇒(関連記事)いったい何処から音漏れがしているのか?オフィス・クリニックでの事例4点!
よって、厳粛な雰囲気を重視している空間:例えば、オフィス・相談事務所なら会議室・相談スペース、クリニックなら完全個室の診療室内などでは、心理的な抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。
以前、某クリニックで、スタッフの電話の声が診察室に漏れるので何とかしたいというご相談を受けました。診察室のすぐ裏が丁度スタッフルームとなっており、扉を通じて漏れて聞こえるます。スタッフルームも面積がとても小さいので声が反響して、ダダ洩れの状態でした。
この場合は、診察室側にスピーカーを設置する事となりますが、会話漏れの音量レベルもそこまで大きくなく、マスキング音の音量も暗騒音レベル:普通のオフィスの雑音レベルの音量50~53bd程度:(半径1m以内で話す会話のおよそ半分以下程度の音量)で十分で、室内での会話を妨げるレベルでもありませでした。
しかし、現場のドクターは、音が一切ないシーンとした空間でないと診療に差支えがあるとの事で、残念ながら導入には至りませんでした。(この場合、扉を防音対応にして頂くか、ご面倒ではありますがスタッフルームでお電話をせずにクリニックの外でお電話をして頂くしかないかと思われます。)
ただ、別の某クリニック様では、上記のクリニック様とほぼ同じ環境でしたが、こちらのドクターには特に気にならないとの事で、ご導入をしていただました。
*会議室内での弊社サウンドマスキング導入例。それぞれのお部屋にスピーカーを設置し、各お部屋同士の会話漏れ対策を行いました。ちなみに、ガラスは音漏れがしやすい素材です。
なお、オフィスの会議室内に導入をしていただいた企業様の所感では、「最初は無音空間に音を流す事に抵抗はあったが直ぐになれた。」また「シーンとし過ぎていないので、変な緊張感がなくなり、話しやすくなった。」という意見も頂いております。
もちろん「会議室に音が流れるのは不自然!」というご意見もありますが、情報漏洩のリスクを考えると検討の余地はあるかもしれません。
以上、サウンドマスキングを導入する上で、クリアにすべき事項3点をご案内させて頂きました。
まとめますと、
・「"ガヤガヤ感"を抑えたい」「静かな空間」とさせたい場合は、防音工事の領域となる。
・遮音がある程度されている環境での導入が望ましい。
・個室の会議室内や診療室内に導入の際は、場の雰囲気に合うかどうかの確認が必要かも。
といった所です。
なお、弊社では、貴社の空間特性に合わせたサウンドマスキング導入のご相談を随時お受けしておりますので、お気軽にお申し付けくださいませ。