音量だけではなく、"音質"も大きく関係する
レストラン、バー、フィットネスクラブなどで「音楽がうるさい!」というお客様の声を耳にすることがあるかもしれません。音量が大きい場合は、音を下げれば解決しますが、音量を下げても「まだ耳障りで、不快だ」と感じることがあります。
実は、音が「うるさい」と感じるのは音量だけでなく、音質も大きく関係しています。例えば、家族が自宅でスマホからYouTubeを再生しているとき、音量は小さいのに「なんだか耳障りだ」と感じた経験はありませんか?
(参考記事)店内BGMの音量はどれくらいが適切?簡単な測定方法と目安のご案内
聴覚上「うるさい」と感じる要因
では、どのような音質が「うるさい」と感じられるのでしょうか?これには主に2つの要因があります。
①「汚い」「濁っている」と感じる場合
近い音域の音が重なって鳴っているときに、この感覚が生じます。②「キンキン響く」「耳障り」と感じる場合
人が敏感に感じる音、いわゆるプレゼンス帯域の音が目立つと、この感覚が生じます。
これらの現象が起こるのは、流す音楽の特性にも関係しますが、スピーカーやその空間の中での響き方にも関係してきます。
上記のような現象が起こる要因
- 流す音楽のアレンジによるもの
- 設置されたスピーカーの特性によるもの
- 空間の中での音楽の響き方によるもの
上記の要因に注意を払えば、音量をある程度上げても「うるさい」と感じられにくくなります。特に、比較的大きな音量で音楽を流す店舗(フィットネスクラブやクラブ、バーなど)では、長時間滞在すると「耳がキンキンする」「疲れる」と感じることがありますが、これらの問題を改善できる可能性があります。
しかし、スピーカー自体を交換するのは、予算や施工工事の関係で難しいこともあるでしょう。そこで今回は、スピーカーを交換せずに、音が「うるさい」と感じられる原因を解決するためのポイントを紹介します。
うるさい①:「汚い」と感じる場合
音が「汚い」と感じるのは、生理的に認識できる現象です。人間の耳には、音域(周波数)ごとに音を振り分ける「聴覚フィルタ」という機能があり、近い音域の音が重なるとうなりが生じ、「汚い」と感じます。これは、視覚で「ごちゃごちゃしている」と感じるのと同じように、聴覚でも「ごちゃごちゃした音」として認識されます。
例えば、オーケストラでは同じ楽器を重ねて演奏しますが、ピッチ(音程)がずれると「音が汚い、濁っている」とされNGです。一方、ヘビーロックでは、意図的にピッチをずらしたギターフレーズを重ねて「汚い」音を演出することもあります。
安価なスピーカーによる「汚い音」
安価なスピーカーで音数が多い楽曲を再生すると、音がごちゃごちゃして聞こえることがあります。Jポップや、商業的なダンスポップス、ジャズのビッグバンドなど、音数の多い賑やかな楽曲では特にその傾向が強くなります。これは、スピーカーから出力される音が、元の音源とは異なり、凹凸のある音波になるためです。特に安価なスピーカーでは、複数の楽器が同時に鳴ると、ノイズが目立ち、何の音かわからない「汚い」音として聞こえてしまうことがあります。
オーディオ雑誌ではこれを「解像度」と表現しますが、機会があれば、オーディオ販売店などで普段聞いている音楽を良質なスピーカーで再生してみると、「ごちゃごちゃして汚い」と感じていた曲が「実は綺麗な音楽だった!」と驚くことがあるかもしれません。(もちろん、店員や他のお客様に迷惑がかからない範囲で試してみましょう。)
では、今設置されているスピーカーをそのまま使用して、少しでも綺麗に聞こえさせるためにはどうすれば良いでしょうか?
以下ポイントは2つです。
- 音数がすくない音楽に変更する。
- イコライザーという機器で、ごちゃごちゃしている箇所の音量だけを抑える。
解決策その1:音数が少ない音楽に変更する
音数が少ない音楽は、安価なスピーカーでも比較的綺麗に聞こえます。例えば、ヒーリング系の音楽や、ピアノやギターだけで構成されたアコースティックミュージックなどです。
これらは、スパやエステサロン、病院の待合室など、リラクゼーションを目的とする空間に適しています。そう考えると、クリニックの待合室で、たまに情報バラエティー番組が流れている場合がありますが、その番組に興味がない患者さんは実は不快に感じているかも知れませんね。
ただし、ブティックやフィットネスクラブ、週末の音楽イベントを開催するバー・クラブなどでは、必ずしもリラックス系の音楽が求められるとは限りません。
解決策その2:イコライザーでごちゃごちゃした帯域の音量を下げる
コライザーという機器を使って、重なり合ってノイズとなる帯域の音量を調整する方法もあります。これにより、ノイジーな部分を目立たなくし、音がはっきりと感じられるようになります。ただ、この作業は専門的な作業ですので、詳しい方に一度ご相談をしてみてください。
(参考記事)音質を向上させるポイントとは?"周波数"を考えよう!
"うるさい ②"「キンキンする」と感じる場合
「キンキンする」と感じる原因の一つに、プレゼンス帯域と呼ばれる周波数帯域があります。プレゼンスとは「存在感」を意味し、人の声を明瞭にしたり、楽器の音を際立たせたりする重要な帯域です。この帯域は音楽の存在感を引き立てますが、人の聴覚は特に敏感で、音量を下げても他の音より目立つ傾向にあります。例として、食器がぶつかる音や電子レンジの「チン」という音がわかりやすいでしょう。
プレゼンス帯域が弱いと「不明瞭」や「暗い」と感じ、逆に強すぎると「キンキンする」「耳障り」となります。これが発生する原因は、スピーカーの特性、楽曲のアレンジ、そして音楽を再生する環境にあります。
スピーカーの特性と楽曲のアレンジによる「キンキンする音」
スピーカーには、プレゼンス帯域が強調されるものと、そうでないものがあります(これは価格に関係ありません)。例えば、スマホのスピーカーは、声をはっきり聴かせるためにこの帯域が強調されていますが、長時間聞くと耳障りに感じることがあります。
また、元の楽曲自体がこの帯域を強調している場合もあります。EDMやアッパーなHIP-HOPなど、力強さや派手さを求める音楽では、プレゼンス帯域が意図的に強調されることがあります。これはヒーリング音楽でも同様で、アレンジによってはピアノやバイオリンの高音が「キンキン」響くことがあります。
空間の環境による「キンキンとする音」
さらに、部屋の壁や床の材質によっても、この帯域の音が強調されることがあります。コンクリートやフローリング、鏡などの素材は、プレゼンス帯域の音を反射しやすく、音が強く聞こえる原因になります。逆に、カーテンや木製リブ材、ロックウールなどは、この帯域の音を吸収しやすい素材です。
では、このような場合は、どうすればよいでしょうか?可能であれば、以下のことを試してみてください。
- スピーカーの角度を変えてみる(天井吊り下げ型の場合)
- イコライザーという機器で、プレゼンス帯域の音を調整してみる
解決策その1:スピーカーの角度を調整する(天井吊り下げ型の場合)
天井の吊り下げ式スピーカーを設置されていて、角度が調整できるのであれば、その角度を変えてみるのも一つの手です。
スピーカーを直接人に向けるのではなく、壁などに反射をさせて、この帯域の音を吸収させ間接的に音が聞こえるようにする方法です。スピーカー設置場所の近くにカーテンや木製リブ材、ロックウールなどがあれば、試しにその方向にスピーカーの角度を向けてください。
反対に、コンクリートやフローリング(合板)ガラスなどが周囲にある場合は、先述のように音が強調されて逆効果になる場合もありますのでご注意ください。
解決策その2:イコライザーでプレゼンス帯域の音量を調整する
先ほどご案内しましたイコライザーで、この帯域の音を抑えるのも手です。ただ、やり方によっては、音が暗くなる音楽がこもって聞こえてしまい、また流す音量によっては、音のバランスが悪くなることもありますので、こちらも一度詳しい方にご相談をしてみてくださいね。
(参考記事)音質を向上させるポイントとは?"周波数"を考えよう!
弊社事例のご紹介
以前、弊社が支援させていただいたクラブ・バーでは、オーナー様こだわりの特注スピーカーシステムが導入されていました。しかし、音楽の高音が耳にキンキンと響き、「耳障りだ」という印象を受けることがありました。
そのシステムは、低音を担当するウーハースピーカーと、中高音域を担当するツイータースピーカーで構成されていました。ツイーターの音量を下げると全体の音のバランスが崩れてしまい、音楽が売りの店舗としては問題がありました。そこで、イコライザーを使って音質を調整した結果、音の問題を解消し、来店されたお客様からの評判も向上しました。
弊社では、音質向上のためのご提案や設置設定も行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
弊社関連サービス
まとめ
人が音質から「うるさい」と感じられる原因
- 近い音域の音が複数重なっている場合:特に安価なスピーカーで音数が多い曲を流す場合
- 人が敏感に認識する音:プレゼンス帯域が目立っている場合とある。
解決策
- ①の場合は、音数が少ない音楽を流れる。またはイコライザーでごちゃごちゃしたと感じる音域の音量を下げる。
- ②の場合は、スピーカーの角度を変える。またイコライザーでプレゼンス領域の音を抑える。