一般的に店内音楽の音量は、現場スタッフの感覚や価値観で決定されがちなことが多いようです。中には「とりあえず音楽が再生されていればいいや」的に捉えられて、音量までは気にされていない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし音量設定の基準があやふやですと、店内の雑音や賑わいなどで音楽がお客様にほとんど伝わらない、反対に大きすぎてお客様に不快な印象を与えてしまう、となりがちなようです。
音楽を空間演出/ブランディングの一部としてとらえている企業様の中には、専門家に選曲を依頼したり、良いと言われる音響設備を導入したりされているかもしれませんが、これでは元も子もないですよね。
顧客満足が最も高く抜群のリピート率を誇る某アミューズメント施設では、選曲や音響設備に対して力をいれていますが、実は音量に対しても施設内で明確な基準を設けられており、その基準値以下の音量で音楽を再生してはいけないことになっているようです。
そこで今回は、だれでも簡単に音量を測定できる方法と、音量の設定の目安をご案内させて頂きます。
事前準備と予備知識:音量測定方法と音量の大体の目安
音量の測定自体は、スマホの無料アプリで簡単にできます。
App STOREやGoogle Playで、"騒音計"、"騒音測定器"などとキーワードを入れると、色々なアプリが出てきますので、任意に選んでダウンロードしてください。(有料のもありますが、まずは無料ものでお試しくださいね。)
これは名前通りに、防音効果などを確かめるための音漏れ騒音などを測定するアプリです。もちろん本格的な測定器と比べるとそこそこの誤差はありますが、BGM音楽の音量を測定する程度ではこれで十分です。
ちなみに私が使用しているのは、SLA Liteというアプリです。これを元に操作方法をご案内させて頂きます。
アプリを起動させたら、▶のマークをタップすると測定をスタートし、もう一度押すと測定を停止します。再度、▶をタップすると、それまでの測定がリセットされて再び測定を行います。以上これで終了!実に簡単ですね。
見ていただく測定値は、画面中央にあるdbという値です。これは専門用語で音圧レベルといいますが、とりあえず難しい事は置いておいて、音量だと考えてください。また、画面下の左右に、測定中の最大値と最小値が出てきますので、こちらも是非参照にしてください。(音楽や雑音は一定の音量ではありませんから。)
ここでポイントとなるのが、スマホのマイク(スピーカー)を下に向けずに、耳の位置に近い横の方向にスマホを向けて測定する事です。といいますのも、スマホのマイクは指向性:音を拾う範囲が狭いので、下に向けてしまうと正確に測定ができないからです。
さて、dbのおおまかな音の目安ですが、
- 80db:電車の中
- 60db:半径1mでの普通の会話
- 40db:静かなオフィスの中
- 20b:ささやき声
と考えてください。
音圧が10db違うと感覚値としてだいたい音量が半分ぐらい違って聞こえますので、数dbの違いで雰囲気が変わってきます。
ここでお気づきになられたかもいらっしゃるかと思いますが、一般的にBGMの音量が60db以上ですと、会話の妨げになる可能性もあり、人によっては音が大きいと感じられるかもしれません。また音楽がバックグラウンド/背景として機能するのではなく、前に出て目立つように感じられるのもこの60dbぐらいからではないでしょうか。
反対に40dbぐらいですと、店内がにぎわうと音楽がお客様にはほとんど知覚されないかと思われます。
このようにして考えると、音量の大体の基準がイメージしやすいのではないでしょうか。
まずは店内の雑音の音量を測定してみよう!
では、音楽を流していないときの店内の雑音を測定してみましょう。なぜ?と思われるかもしれませんが、測定している音量が、純粋にスピーカーから流れている音楽の音量なのか、それともザワザワ感も含めた音量なのかを分けて考えた方が良いからです。店内の雑音の音量を分かった上で、BGM音楽の音量を調整した方が良いわけですね。
もし、時間帯や曜日によってお客様などの量が違う場合は、ガヤガヤ感も違ってくるかと思われますので、込み合っている時とそうでないときの2パターンぐらいを測定してみてください。
で、いつ測定するのかですが、例えば曲と次にかかると曲の間の曲が再生されていない時に、タイミングよくサクッと行って頂いてはいかがでしょうか?
店内音楽の音量を測定しながら、音量レベルを調整しよう
では、次に音楽を流して測定し、音量調整機器(アンプ/BGM再生機など)の音量レベルを決めましょう。測定するタイミングは営業時間外(難しい場合は、オープン直後)の静かな時間帯が良いですね。
音量レベルの目安として、先ほど測定した2種類の雑音の音量近辺となるように調整をしてみましょう。雑音より音楽を目立たせたいようでしたら、雑音より数dbだけ大きくなるようにしてみてくださいね。(もし調整機器にテープなどで印がつけられるようであれば便利ですね。)
最後に、営業時間内で、先ほど設定した音量レベルで音楽を流してみましょう。後は、感覚的に「少し物足りない」「少し大きい」などありましたら、音量レベルを微調整してみてくださいね。
流す音楽やスピーカーのスペックなどによっても伝わり方は変わってきます
以上、音量の目安を記載しましたが、実は流す音楽や再生するスピーカーによっても聞こえ方は変わってきます。音量を下げても場合によっては、「なんかうるさいな。。」と感じる場合もあるかもしれません。これは音楽のアレンジや周波数、または空間の特性にもかかわってくるのですが、ご興味あるかたは以下の記事をご参考くださいね。
関連記事 ⇒ BGM・音楽の「うるさい!」を聴覚メカニズムから改善する方法
関連記事 ⇒ 音質を向上させるポイントとは?"周波数"を考えよう!